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サムライヒーロー納豆伝説

Samurai Heroes and natto (fermented soybeans)

 八幡太郎義家、つまり源義家(minamotonoyoshiie 1039〜1106)は、その父、頼義と共に奥州を平定した伝説の武将。鎌倉幕府を作った源頼朝の先祖である。
 義家は、「前九年の役」という戦いで、安倍頼任、貞任と戦い、勝利。「後三年の役」では、清原氏の争いを平定。この際、朝廷から褒美が出なかったため、部下に私財を分け与えて、その労をねぎらったという。
 
 源頼義にしろ、義家にしろ、朝廷から遣わされた侍大将であるから、民にはヒーローのようなもの。都育ち、高貴な血筋。に加えて、義家は、体も強く、そして情にも厚かった。その姿を一目拝もうと皆が押しかけ、娘たちは、その御種(優秀な遺伝子!)を授かりたいということで、大変にモテまくり。
 
 さて、超有名人の八幡太郎義家の通ったところには、ある有名な伝説が生まれた。それは・・・納豆伝説。そもそも、納豆は、日本古来の食品。納豆がなぜ出来たか。私はこの話を、祖母から聞いた。
 
「昔々、京の都から八幡太郎義家という侍大将がやってきて、奥州平定のために常陸の地を通ることになった。
 村々では、都の侍大将をもてなした。八幡太郎義家は、農家の納屋に馬を繋いだ。そして、馬には、刻み藁だけではなく、茹でた大豆を食べさせよ、と命じた。人も馬も、大豆を食べたほうが力が出るからである。(村人が歓迎の意を込めて、茹大豆を饗した、という説もある。)

 馬が食べ残した刻み藁と大豆は、次の日、ねばねばして腐ったようになったが、馬はそれを喜んで食べ、そして元気であった。それを見た八幡太郎義家が、試しに食べてみたら・・・「うまい!」 納屋で出来た豆だから「納豆」。義家は常陸の地でたらふく納豆を食べて力をつけ、奥州を平定した、ということである。」
 

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 「納豆って、天狗が作ったんだよね?」と、茨城在住の知人に聞かれたことがありますが・・・それは水戸納豆といえば天狗納豆、というようなイメージからの連想でしょう。納豆伝説は、八幡太郎義家。
 って、たぶん、義家が通った頃には、すでに納豆はあったのでしょうけどね。そして、その納豆をモリモリ食べて、義家は、戦いに!子作りに!励んだのであります。素晴らしき健康食品、納豆! 
 
 というわけで、納豆は、日本生まれの純日本食なのですが、ただし、東日本中心に、です。
 納豆は西日本にはあまり馴染みのない食品で、かつて西日本には納豆を見たことがない、という人たちも多く存在していました。
 都育ち、つまり京の都(西日本)で育った義家も、常陸の国(現在の茨城、東日本)に赴き、初めて納豆を見たのでしょう。
 
 ガイジンさんにとって、納豆は、日本(東日本)で暮らすにあたり、必ず知っておかなければならない必須食品。アキハバラ周辺の回転寿司店やコンビニにも、納豆巻きというメニューが存在していますからね。
 海外からやってきた人に、「納豆大丈夫?」と、東日本人はたいてい訊ねます。「納豆スキ」と答えれば、「おお〜っ!」と、その場が盛り上がり、その後、納豆攻めにあうことは確実。昔、知人留学生が、納豆好きであることを積極的にアピールして、かなり食費を浮かせていましたっけ。
 東南アジアには、「テンペ」という納豆に近い食品があるのですが、これ、実際に食べてみた感じでは、納豆とはかなり違う物、と私は思いました。
 
 さて、祖母が子供の頃、納豆は農家で作るものだった、と言います。茹でた大豆がまだ暖かいうちに、藁苞(わらづと)に入れて、人肌ぐらいで暖めて丸1日。これが基本の作り方。藁についている納豆菌(枯草菌の一種)の作用で、驚くほど簡単に納豆が出来るのだとか。
 大豆でなくっちゃ納豆はできないの?と祖母に聞いたら、そんなことはないそうです。小豆だろうが黒豆だろうが、納豆はできるといいます。茹でて、藁でくるんで、適温で1日たてば。
 
 ただし、藁は消毒したほうが良く、ネズミが媒介するサルモネラ菌などの問題もあるので、藁苞に入れて作る方法は、一般家庭ではおすすめはできません。昔から、農家で必ず猫を飼っていたのは、ネズミの害を防ぐため。ネズミは米を食うだけではなく、病原菌も媒介し、いろいろと問題を起こす害獣ですから。ではどうするか。家庭で作る場合には、市販の納豆を、茹でた大豆に混ぜるほうが確実で安全です。
 
 納豆は、一般的にはグチャグチャかき混ぜてから食べますが、混ぜれば混ぜるほどに、匂いがきつく、食べにくくなっていく、と、私は思います。
 なぜなら私は、糸引き納豆が食べられません。はっきりと苦手なのです。では納豆を食べる時にはどうするか。絶対に混ぜないで、そのままそっとゴハンに載せて食べます。周囲からは驚かれますが、そういう食べ方をする日本人もいるのです。
 私の母の友人のヨシコさんは、サラダ玉ねぎとピーマンのみじん切りをさっと混ぜ、ポン酢で食べるそうです。もちろん、やたらにかき混ぜません。ぐるぐるネチャネチャ糸引き納豆だけが納豆の食べ方ではないのです。納豆に漬物のみじん切りを和えて食べる、というレシピは、みんな好きみたい。たくあん、キュウリの古漬け、柴漬けあたりを刻んで混ぜるのがおすすめです。
 干納豆という保存食もあります。これは、そのままポリポリしてもいけますし、ふりかけ、お茶漬けにして食べる人も多いようです。
 
 私のとっておきのおすすめは、納豆の天ぷら。納豆を大スプーン1杯(もちろん、かき混ぜない!)、天ぷらの衣を付けて、油で揚げるだけ。周囲の衣がカリッとしたら出来上がりです。大根おろしと生姜入りの天汁でどうぞ。ホント、おいしいんだから〜。ただし、問題もあって・・・。これを作ると、家の中が納豆臭くなります。天ぷら油は、その後、使用できなくなります。そのため、我が家では作るのを禁止されてしまいましたが。
 
 納豆の本拠地である茨城、福島、そして山形、栃木、宮城。 そのほとんどが東日本大震災での被害を受けた地域です。さあ、納豆食べて、元気を出しましょう! そして一日も早い復旧を、心より祈っています。

秋月さやか


参考文献:茨城の史跡と伝説(茨城新聞社)暁印書館
       新版 世界人名辞典 日本編 東京堂出版
写真:素材辞典

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