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端午の節句

 五節句のひとつ。日本では、端午の節句は、男子の健やかな成長を祝う日になっていますが・・・。
 古来中国では、古来、厄除け、邪気払いの日。5月といえば、グレゴリオ暦での6月。暑くなってきて、物が腐りやすく、虫も出てくる。だから、邪気払い! それが古来の端午の節句です。
 
 まず、中国の端午の節句では、「薬玉」を飾ります。薬玉は、五色の糸で飾った綺麗な毬のようなものです。中に、乾燥させた蓬が入っているそう。蓬を乾燥させたものは艾(もぐさ)。お灸の時に使うもの。そうしたことから、蓬は体内の毒素を外に出す、と考えられたのでしょう。そして、毒虫は、蓬の香りを嫌うのだそうです。
 
 それから「五毒符」。これは毒を持って毒を制する、といったような意味合いで、五つの毒虫が描かれた紙。「むかで、げじげじ、蛇、蠍、ガマ。」昔、チャイニーズタウンで、黄色い紙に赤く描かれた絵を見たような記憶がありますが。「ひきがえる、とかげ、クモ、蛇、おさむし」という別バージョンもあるようです。これらは、呪術で有名な蟲毒(こどく)で集められる毒虫と考えれば、まあ、わかりやすいでしょう。
 (私はみたことがないのですが、サソリやムカデなどの模様が描かれた「五毒餅」というお菓子もあるんだそうです。といってもこれ、ムカデやサソリは入っていません! 月餅みたいな餡入りのケーキだそうですけど。)
 
 粽は、もち米を茅の葉で巻いて蒸かしたもの。こうして作った粽は、腐りにくく、日持ちするのです。古来よりの保存食、それが粽。中国の粽は、供え物にもします。5月5日は、屈原という、古代中国の詩人が、湖に身を投げて亡くなった日で、捧げ物として粽を湖に捧げます。たぶん夏は水難事故も多く、それを鎮める意味もあったのではないか、あるいは雨乞いのために水龍への捧げ物だったのか?などなど、いろいろな説が考えられるでしょう。
 
 そして鍾馗像を飾る。これも魔除けです。そもそも、鍾馗像が魔除けとなったのは、以下の伝説によります。
 ある時、玄宗皇帝が病気で寝ていると、夢の中で小鬼(人に憂いをもたらす虚耗という妖怪)が悪さをしているのを見る。玄宗皇帝は、その小鬼のせいで、病にかかってしまったのであるが、たぶん、激しい落ち込みで、欝のひどい状態といったような感じ。政治はたしかに激務で、そりゃストレスもたまるに違いなく。
 しかし、夢の中に大男があらわれ、この小鬼を食べてしまう。玄宗皇帝が夢の中で礼を述べると、大男は、自分の身の上を語り始める。なんと、大男は、かつて科挙の試験に落ちたために宮中で自殺した鍾馗という人物だったのである。しかし、玄宗皇帝が手厚く弔ってくれたことに感謝して、夢の中に参上した、と。玄宗皇帝が夢からさめると、病はすっかり治っていたということである。
 そう、なんと驚き、科挙の試験に失敗して自殺・・・という履歴だったわけですよ。文武両道に秀でていたとされる鍾馗であったが、試験運は悪かったらしい。心の病、憂鬱を晴らす、これも厄除けには大切なことです。
 

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 一方、日本の端午の節句は、鯉幟(こいのぼり)、鎧兜を飾る。これらはいずれも、日本固有の風習。そして、男の子の成長を祝う祭りになったのは、鎖国の江戸時代のこと。
 鯉幟は男の子が生まれた〜と、知らせるための幟(のぼり)。これは、もともとは武家の風習だったようで、だから、落ち武者集落(戦いに負けて隠れ住んでいる人たちの集落)では、鯉幟をたてることは禁止。菖蒲の葉は、その尖った形が剣をあらわすとして、武家にふさわしいと考えられたのでしょう。しかし、武家の風習というよりも、江戸時代では、町人たちも端午の節句を祝ったわけで、男の子よ、雄雄しく育て、ということなのでしょうが、なんか、魔除けとはまったく縁のない、元気な行事になっておりますね。
 
 つまり、日本と中国とで共通しているのは、菖蒲、粽、鍾馗像。
 ただし、中国では菖蒲酒ですが、日本では菖蒲湯に入ります。(注・菖蒲、と呼んでいる植物の種類そのものが違います。)
 粽は、中国では、古くは茅(ススキ)の葉を用いていたようですが、日本では笹粽。笹で米を包んで蒸かしたものは、香りも良く、保存食にもなります。
 鍾馗様の像に、受験戦争を勝ち抜きますように、というような願いを込めるのは、ちょっと難しいかも知れません。たとえ試験に失敗しても、それでも頑張れ!というような励ましになるのかどうか・・・。まあ、このあたり、なかなか難しいところではありますが。
 受験のお守りでしたら、菅原道真公を飾ったほうがよろしいのでは? といっても、菅原道真公も左遷されてしまいますので、このあたり、やはりかなり難しゅうございますな。
 
 ところで、鯉幟(こいのぼり)の鯉って、シシャモとか、メザシに見える、という批評もありますが・・・やっぱりきました。「日本人って、鯉も干物にして食べるの?鯉を干したのが鯉幟?」と、Kちゃん(from台湾)に、逆質問されました。「鯉は干物ではなく、丸揚げがオイシイよ。」と、Kちゃん。はい、私もまったく異論はありません。鯉の丸揚げあんかけ、私も大好き。ただ、端午の節句の食べ物ではありませんけれどね。

秋月さやか


参考文献:中国の年中行事 中村喬 平凡社選書
写真:素材辞典

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