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丸か四角か、はたまた三角か

 この季節、スーパーに行くと、紅白の垂れ幕付きで餅が並んでいる。角餅、丸餅。関東で育った人は角餅。関西で育った人は丸餅。これは、なかなか譲れないものらしい。そこには、郷土愛というだけでなく、子供の頃の年末年始の思い出というのがあるからだろう。
 どうやら、糸魚川、大井川のあたりで、丸と四角が二分されているらしい。昔なら、ヘルツの違いは風習の違い。
 昔、年末年始の関東で丸餅を探すのは困難だったそうだ。店頭には出回らないから、餅屋に予約して作ってもらう。しかし、問題は餅の形だけではない。だから関西から転勤してきた人たちは、さっさと実家へ里帰りする。あるいは実家から、丸餅を含め、正月食材一式を送ってもらっていたのだという。
 
 年末年始は気が抜けない、という知人夫婦は、片方が関西、片方が関東の出身。年始の雑煮の餅の形は、多数決で決めるんだそうだ。2人いる子供たちに、どっちが食べたいか聞く。たいていは引き分け。しかたないので、じゃんけん。
 が、年末年始、どちらかの親が泊まりに来るとなると話は別。だから「年末年始、孫の顔でも見に来れば?」と、自分の親に誘いをかける。まことに親孝行なことである。家がそんなに広いわけではないから、先に予約をとったほうが勝ち。
 
 夫の海外赴任で国外に暮らしている知人に聞いたら、そこの日本人会の集まりでは2種類作るという。そして現地の人からは、日本人は選ぶ餅の形で風習がわかる、と言われているそうである。丸を選んだ人には、「モーカリマッカ?」とフレンドリーに声をかけ、四角を選んだ人には、「オセワサマ〜」と丁寧に頭を下げろ、と。つまり、日本人は、「丸い人」と「四角い人」に二分されるのである。
 

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 とある年末、外国籍の留学生や帰国子女たちとスーパーマーケットに出かけた。樽入りの酢蛸を見て「ワ〜オ」とびっくり、数の子に首を傾げる。数の子って、プラスチックみたいで気味が悪いそうだ。年末年始のスーパーマーケットは、彼らにとって、このうえもなく不思議なワンダーランド。
 
 餅には丸と四角がある、と彼らは日本語教室で教えられている。「あ〜、ホントだ、シカクとマル、2種類ある〜!!」と、はしゃぐ彼ら。
 「そうそう、オセンベーだってね、マルとシカクがあるよ。」と、日本に詳しいNちゃんが得意気に言う。
 (ん?餅と煎餅には関連性はないような気がする…)
 「でもね、モチとオセンベーは反対なの。関東のソーカーセンベーはマル。関西のカワラセンベーはシカク。」
 (カワラセンベー?なんじゃそれは?)
 へえ〜、とうなずきかける彼らに私は言った。
 「あのね、オセンベーには、関西関東の区別はないんだよ。あれはテキトーで、いろいろバラエティがあるの。四角いソーカセンベーもあるよ。」
 「え〜?そうかなぁ。」と不満気なNちゃん。「センベーは丸と四角だけど、モチにはサンカクもあるしょ?」と、Nちゃんは言い出した。
 「サンカクぅう〜?!」
 「クズモチ。サンカクあるですよね?」
 
 その後、私は知人夫婦に電話をした。「元旦の雑煮の餅は、三角にしてみたらいかが?」と。  彼女はしばらく考えてから言った。「まさか。っていうか、それ、たぶん誰も食べない。仮に三角にするとしても、澄まし仕立てにするのか、白味噌にするのか、っていう問題があるでしょう。」
 
 さて、みなさんの家の雑煮は、いかがですか?

秋月さやか


写真:素材辞典

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