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重陽の節句、長寿の菊

 9月9日、重陽の節句。なぜ重陽かというと、九は陽の数(奇数は陽)。その九が重なっているから重陽。旧暦では、だいたい10月前半ぐらいにやってくる節句日。そして重陽の節句は、菊の花を愛でる日なのです。
 
 菊の花、野菊は日本にも古来から自生しており、白や紫の可憐な花を咲かせます。しかし、薬用の菊は、天平時代に中国から渡ってきたもの。つまり、漢方薬の材料。もともとは薬材だったものの、その姿が美しく、香りも良いことから、しだいに観賞用としても広まっていきます。
 
 私の祖母は、「黄色い菊は食べられる」と教えてくれました。祖母の実家は、秋の菊人形で有名なところ。姿を愛で、香りを楽しみ、食べて養生。それが菊。黄色以外の菊は苦味が強いので食用には適さない、と教えられたのですが・・・。しかし、今では品種改良が進んだらしく、いろいろな色の食用菊があります。
 
 食用菊の代表はスタンダードな黄色の「阿房宮」。大輪の花は、まさに食べてよし、鑑賞にもよし。名前の「阿房宮」は、秦の始皇帝が築こうとした宮殿の名前から。
 そして紫色の「延命楽」。これ、和名では「もってのほか」というそうです。とてもおいしいので、嫁に食べさせるなど「もってのほか」という意味なんだそうですが・・・。
 昔、新潟長岡の法事に行きましたら、菊のおひたしが出ました。新潟は食用菊の産地です。「あ、紫色の菊」とびっくりする私に、「それはね、もってのほかという品種なの」と教えてくださった叔母さん。あの時、その名前のいわれは・・・さすがに(嫁である私には)教えてくれませんでしたね(笑)。
 
 しかし、色に関わらず、食用にできるのは食用菊として販売されているものだけですので、注意してください。花屋さんで買った菊は食べられません。それは、品種の問題ではなく、栽培に使用する農薬の問題です。自宅のプランターで無農薬で栽培した菊なら、もちろん食べられます! 菊はアブラムシに気をつければ、まず大丈夫でしょう。もしもアブラムシを見つけたら、取り除きます。殺虫剤は使用しないで!食べられなくなってしまいますからね。
 

画像:菊・食用


 菊の食べ方としては、おひたしが一般的。
 菊の花を丸ごと茹でる。花びらを外して茹でるように指示している料理書もありますが、これ、湯から引き上げる時に面倒です。私は沸騰した湯にだいたい2〜3分程度。ヘタを上にして入れますが、ひっくり返ったり、浮かび上がってくるので、菜箸で抑えたり、かき混ぜながら茹でる。熱湯をかけるだけではダメで、多少茹で時間が必要です。花びらを外したものよりも、多少時間を長めに。ま、茹ですぎても問題ありません。花びらがしんなりしたら湯から引き上げて水をかけて冷やします。
 そしてヘタと花の中心部分を取り除きます。・・・というより、周囲の花びらだけをむしる、といったほうがわかりやすいでしょう。とにかく中心部分は苦いので、食べないほうがいいです。
 ダシ醤油よりも、ポン酢、甘酢などがおすすめ。菊の色素は、酢にあうとより鮮やかになりますし、苦味も和らぐのです。
 しめじのおひたしと合わせると、秋らしい1品になります。秋鯖の酢の物や、秋の焼き魚に付け合せる、というのもいいでしょう。茹でた春雨と一緒に中華風ドレッシングをかければ、中華風に変身!・・・って、もともと中国原産ですからね。
 
 菊は宿根草です。株分けをして育てれば、いくらでも増えていく、いつまでも長生きする、と祖母は教えてくれました。だからでしょう、菊の花に長寿の力があると信じられたのは。
 花屋さんのカタログを調べてみましたら、菊の種も販売されていました。つまり、株分けでも種でも増えていくわけで、繁殖力旺盛。いつまでも絶えることなく、体に良く、しかも邪気を払う。さらには姿よし、香り良し、味もよし。
 菊の花にたまった露には若返りの力があるとか、肌が美しくなるとかいう言い伝えもあります。重陽の節句は、健康について考えるには良い日でしょう。敬老の日は9月15日ですが、むしろ重陽の節句のほうが、敬老の意味がこめられるような気もします。
 
 さて、中国の重陽の節句でも菊は重要です。古代中国では、重陽の節句は邪気を払う日。菊が長寿にいい、というのは、邪気払いの力によるところが大きいのでしょう。邪気を溜め込まず、清浄に保てば、いつまでも若々しい、というわけです。
 3月3日が水辺の禊であるのに対し、9月9日は、高台に登る習慣がありました。菊花酒と御馳走を持って山に登る、いわば秋のピクニック。高いところに登って難を逃れる、というのですが、日頃の防災対策のようなものだったのでしょう。また、高いところに登って空を眺め、天気を調べることにも意味があったのだろうと思います。たしかに、厄除けには、事前の危険チェック、危機管理が大切。そして、広い空を眺めながら視野を広く、体を伸ばしてみる。それだけでも心身の健康によさそう。高いところ、という意味では、展望台や観覧車でのデート、なんていうのもありかも知れませんよ。将来のことを話し合いながら、ね。

秋月さやか


参考文献:
中国の年中行事 中村喬 平凡社選書
ハーブの知識と応用 小松美枝子 グラフ社
写真:素材事典

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