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桜の花に豊作を祈る

 古代、花といえば、桜。桜は、日本では重要な花でした。日本には桜の野生種(原種)11種があります。
 そして富士山に祭られている女神コノハナサクヤ姫の花が桜。なぜ桜が重要だったかといえば・・・桜の花が散ったら、畑に種を蒔く。これが、古くから伝えられている農耕のルールだからです。
 
 そう、気温計などない昔の時代、畑の中に桜を植えておけば、種の蒔き時を知らせてくれたのです。
 桜の花見は、これから始まる農繁期の前の宴でもありました。農民たちは、桜の花を眺めながら、今年の豊作を祈るのです。花盛りの桜は、その年の豊穣を約束します。
 
 豊穣を祈る樹として大事にされ、日当たりの良い畑の真ん中に植えられた桜は、巨木に成長。樹齢何百年、といわれる桜の名木が結構あるのはそのため。そして桜の巨木にしだれ桜が多いのは、目印になるように、変わった桜を植えたからだともいわれます。
 
 時代が流れ、いつしか花見は行楽行事になりました。そして改良品種、ソメイヨシノが生まれます。ソメイヨシノは、農村の桜ではなく、賑やかな街中、城下町が似合う洗練された桜です。隅田川、館船の花見、そして桜餅。お堀端に白く浮かび上がるソメイヨシノも、もちろん、いいけれど・・・。
 
 桜の花見は、もともとは農耕行事。となると、畑や庭先での花見こそが本来。花見弁当には、豪華絢爛の松花堂などではなく、お重に詰めた稲荷寿司と、根菜、コンニャクの煮しめでキマリかな、と思います。

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 我が家の桜は「富士桜」という種類です。コノハナサクヤ姫の時代からある、桜の原種のような花。たぶん樹齢50〜60年ぐらいでしょうか、富士桜にしては大木で、我が家の自慢の樹です。
 
 しかし、何年か前の大雪で幹の一部が折れ、それから元気がありません。
 それは春先、桜の開花直前の大雪でした。春先の大雪は、気温が上昇しているので、べたつき、着雪します。そして樹が雪の重みに耐え切れず、つぼみをたくさんつけたまま、折れてしまったのです。
 
 桜の花が急に少なくなってしまった頃から、なんとなく不況の時代がやってくるような、そんな予感もしていました。
 
 岐阜の山奥に、「世の中桜」と呼ばれている桜の巨木があるのだそうです。毎年花をつけるわけではないといいます。でも、花が咲いた年は、世の中に良いことがあると、そう言い伝えられているのだとか。今年は、「世の中桜」の花は咲くのでしょうか。我が家の桜は、再び見事な花をつけてくれるのでしょうか。
 
 写真は、見事だった頃の我が家の富士桜です。今年の豊作を祈って。

秋月さやか

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