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金田一村の緑風荘

 「緑風荘」焼失、というニュースを聞いてびっくり。「緑風荘」は、岩手にある座敷童子の宿です。現住所としては二戸市ですが、金田一村というところにあります。
 
 座敷童子は、家の守護神。座敷童子の正体は、昔、幼くして亡くなったその家の子供たちだとされます。昔は乳幼児の死亡率が高く、兄弟姉妹が5人もいれば、その中のひとりぐらいは、幼少時に亡くなっていることも珍しくはなかったのです。そんな子供たちの魂が、子供の姿のままで一族の行く末を見守りながら、奥座敷に住み着いている、それが座敷童子。座敷童子がいる家というのは、まず間違いなく旧家。そして、座敷童子が出る家は栄えると言われます。
 
 今から20年以上前、私、緑風荘の奥座敷(座敷童子の出るえんじゅの間)に泊まったことがあります。焼失前の奥座敷の写真を見たら、人形がたくさんありましたけれど、当時の奥座敷には、そのようなものは一切ありませんでした。
 

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 さて、緑風荘を訪ねたのは、冬の最中。暖房完備の新館に案内されましたが、「奥座敷に泊めてもらっていいですか?」と交渉。「寒いんだよ、それでもいい?」と言いながらも、宿の方は快く準備してくださいました。その当時の宿のご主人にもお話を伺いたかったのですが、折悪しく、おかげんがすぐれずに臥せっているとのことで、支配人さんが、いろいろとお話を聞かせてくださいました。
 しかし、同行した友人たちはみんな嫌がって、結局、旧館の奥の間に泊まる事になったのは私だけ。
 新館の部屋で友人グループと夕食後、私だけ旧館の奥座敷に移動。ぎしぎしする廊下を通って、三間続きの一番奥の間に。とりあえず、こたつに入って魔法瓶のお湯でお茶を入れ、飲む。
 
 ずずっ(お茶をすする音)。・・・。・・・ワオーン・・・(時々、遠くで犬の遠吠え)・・・シーン・・・。・・・ドサッ・・・(庭のほうで、木の枝から雪が落ちる音)。
 
 別にポルターガイストも起こらず、何もあらわれず。ただただ静かなだけ。みちのくの冬。真夜中の深夜。たしかに寒い。欄間の透かし彫り部分が開いているので、ストーブを焚いても、温まった空気が欄間から抜けていくのです。
 
 その当時の私は、毎晩、電気をつけっぱなしで眠っていました。消すと眠れなくなるのです。というわけで、いつもどおり、つけっぱなしで眠ることにしました。
 煌々と電気がついた明るい部屋だったからなのか、すでに良い子はみんな寝ている時間帯だったからなのか、とにかく私は座敷童子の姿を見ることはありませんでした。
 
 座敷童子の姿を見たい人は、映画「遠野物語」をオススメします。遠野にある千葉家という旧家で撮影されたのだそうですが、歴史的建造物と幻想的な映像は、一見の価値ありです。
 

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 ところで、座敷童子は座敷にだけ出るとは限らず、戸外で座敷童子にあうこともある、と言います。
 たとえば、子供たちが6人遊んでいる。大人が子供たちを呼ぶ。「みんなおいで〜。おやつよ〜。」
 すると、5人しかいない。「もうひとりはどうしたの?」「え?もともと5人しかいないよ。」「たしかに6人いたと思ったけれど?」「そういえば、知らない子がひとりいたな。」
 「あの子は誰の友達なんだろう?」と聞いて回ると、5人のうち、誰もその子を知らない、そして、その子はいつの間にかいなくなっている。これも座敷童子の一種なんだそうです。
 
 「緑風荘」には温泉もありました。しんみりと柔らかい湯。立ち寄り温泉になっているので、安比のスキーの帰りなどにも何回か立ち寄ったことがあります。
 その温泉は・・・。1階、男湯。2階女湯。天井は吹き抜けで、2階から1階を見下ろすことができます。1階から2階を見上げても、何も見えません。男湯覗き放題。いい男をじっくりと観察したい人にはおすすめ。ま、湯気であんまり見えませんでしたけど。
 
 そして1階と2階の間には階段があります。といっても、大人は使用しません。「もう出るよ、って言っておいで」といわれた小さな女の子が、ぴょこぴょこと階段を下りていき、「おとうちゃ〜ん、もう出るんだって〜」などという感じです。
 1階から、小さな男の子軍団が2〜3人、わ〜っと駆け上がってきて、女湯洗い場で水を掛け合い、大騒ぎしてすべったころんだ、そしてまた、わ〜っ、と下へ逃げていく。そんな光景も見られました。今時、珍しい丸坊主頭の男の子もいたみたい・・・あ、もしかして、あの子達、座敷童子の一種だったんでしょうか?
 
 (写真は、当時の旅館の支配人さんの許可を取って撮影したものです。ありがとうございました。このたびは心より火事お見舞い申し上げます。)

秋月さやか


参考文献:遠野物語 柳田国男 岩波文庫

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