占術解説
前世からの縁って絶対ですか?
「気になる人がいます。彼とは前世からの縁はあるのでしょうか?」
(前世があると仮定した場合ですが)、恋人や友人、家族などと前世からの縁があるかどうか、たしかに知りたいですよね。ただし、ここでこれから私が書きたいことは、前世からの縁の見分け方ではありません。前世からの縁の切り方です。
これはかなり昔の話になりますが実話です。そして、この話を公開する了解は、すでに当事者に得ています。
その日、深夜1時は過ぎていたでしょう。電話の呼び出し音が鳴り、「いったいこんな時間に・・・」と思いながらも、私は受話器をとりました。入稿前だったので、その関連の連絡かと思ったのです。
「もしもし・・・」「あ、ごめんなさい、こんな夜中に・・・」それは、顔見知りの編集者(女性)の声でした。といっても、私は彼女と一緒に仕事をしたことはありません。いったい何の用件なのか。
「あの、聞きたいことがあるの・・・」「は?なんでしょうか?」
「前世からの縁って絶対なの?」「え?・・・」
最初は、取材かと思ったのですが、でも彼女は占い雑誌の編集者ではありませんし、たしか、経済誌だったような・・・と私が考え込んでいると、彼女は急いで言葉を続けます。 「ごめんなさい、ごめんなさい、本当にごめんなさい! いきなり迷惑ですよね。」そして、泣き出しました。これは、対面鑑定をなさっている鑑定師さんたちには、そんなに珍しい光景ではないでしょう。思い詰めた末に鑑定師を訪ね、それまで抑えていた感情が溢れ出してしまい、思わず泣き出してしまう人というのは、けっこう多い、それは私もよく知っています。きっと彼女もずっと辛い思いを抱えていたのでしょう。が、これは、電話鑑定ではありません。となると・・・ここは、友人として話を聞くしかなさそうです。そう、友人として。
とはいうものの、どうやら、彼女のお悩みは前世絡みのようです。前世をみることは私にはできません。私にできるのは、退行催眠で本人の記憶を戻す手助けをすることだけですが、しかし私は、退行催眠を仕事にしてはいません。それに、実際に退行催眠をやったことがある方ならおわかりでしょうが、そんなにうまくいくものでもないのです。さてどうしたものか・・・。と私が考え込んでいると、しゃくりあげながら彼女が聞いてきました。
「ぜ・・・前世、で・・・夫婦だった、たぶん夫婦だった人と、別れるには・・・ど、どうしたらいいの?」「は?」
「前世、夫婦だった人と別れたいのっ!どうしてもっ!」そう叫んで、彼女はまた泣き出しました。
つまり、彼女、Wさんは、同棲中の恋人Sと別れたいのだそうです。が、恋人Sは、絶対に別れないと主張。それは、前世で2人が夫婦だったから、という理由。どうやったら別れられるのだろうと、毎日毎日考えているうちに、もうすべてが嫌になってしまったと彼女は言います。そして、恋人Sが眠っているうちに、思わず部屋を飛び出してきてしまったのだそうです。
「あなたはもう別れたいんでしょ?」そう聞く私に、彼女はこう言いました。
「でも、そういうわけにはいかないんです。」別れたい、でも別れられない。そういうことは多いでしょう。かつて愛した人と、まったく迷いもなく別れられるわけなどないのです。たぶん、別れたいのか、別れたくないのかさえも微妙な状態でしょう。これは、彼女自身、もうしばらく考えてから結論を出すべきです。となると、もうしばらく時間がかかるでしょう。
時計は深夜2時を回っていました。彼女が住んでいるN区まで、当時、私の住んでいた場所から、深夜であれば車で30分もかかりません。「どこにいるの?迎えに行くから、とりあえずうちに来なさい。」と言う私の言葉を、彼女は遮ります。
「そろそろ部屋に戻らなきゃ。今、近所のコンビニの電話ボックス。Sが目を覚まさないうちに戻るわ。」そう、公衆電話ボックスが、まだ街中にたくさんあった時代の話です。
とにかく、彼女が恋人Sに別れたいと言ったら、こういう言葉が返ってきたといいます。「前世から夫婦だったのに、別れられるわけはないだろう」と。
「前世で夫婦だったら、絶対に別れちゃいけないという話は、初耳だけど〜。」と私は言いました。
「え?前世で夫婦でも、別れることはできるの?」
まあつまり彼女は、「前世で夫婦だったら、現世でも絶対に夫婦にならなくてはならない。」と思い込んでいたらしいのです。がしかし、いったい、どこからそういう思い込みになってしまったのでしょうか? それからが大変でした。「本当に別れても大丈夫?」「もしも現世で結婚しなかったら、運命が狂ってしまうのよね?」「自分で縁を切ってしまったら不幸になってしまうんでしょ?」「離れようとしても、結局はやっぱり離れられないんでしょ?」「別れても、やっぱり再会することになってしまうんだから、だったら、我慢して一緒にいたほうがいいんじゃない?」
恋人Sにそう繰り返し繰り返し言われ続けているうちに、彼女はそれを心の底から信じ込んでしまったらしいのです。彼女は高学歴の女性です。その頃彼女が在籍していた出版社は、名前を出せば誰でもが知っている、経済系の超有名雑誌。迷信などに囚われるのは恥ずかしい、占いも信じてはいない、と彼女はいいます。まあ、信じるか信じないかは彼女の自由ですが。
とにかく、激務をこなして家に帰れば、そこには「前世、夫婦だった俺を捨てるのか・・・?!」「前世の約束を反故にするのか?」「前世を忘れたとは言わせないぞ。思い出せ。」と恨みがましく言い続ける恋人。これはもう、前世(リインカーネーション)ハラスメントとでもいったほうがよさそうです。そして同時に、究極の腐れ縁でしょう。
「ということは、あなたにはその前世の記憶はあるわけよね?」と私は彼女に念のために聞いてみました。「いいえ、私にはないけれど、Sにはあるって。」
「あなたが覚えていないんだから、あるかどうか、わからないんじゃないの?」と私が言うと、「じゃあ、前世ってないの?でたらめなの?」「忘れたから知らないって言えば、それで縁が切れるというわけじゃないでしょう?」と、まくしたてる彼女。あれ?Wさん、いつのまにか、Sと同じこと言ってませんか? つまりのところ、彼女は、前世(かも知れない手がかり)を手放したくないのです。だからSと別れられない・・・。これははっきりと彼女自身の問題です。
延々と彼女の長電話は続き、深夜3時を過ぎた頃に、疲れてきた私は言いました。「あのね、とりあえず、家に帰ったら?明日、仕事でしょ?」
すると彼女はこう言いました。「決めた。もう帰らない!これからタクシーに乗って、東京駅まで行って、始発を待ちます。それから飛行機で実家に帰ります。」と。職場には、親の具合が悪いと説明して、臨時休暇をとる、と言います。たしかに、このまま日常に戻らないほうがいいかも知れない、と私も思いました。「じゃあ、実家に着いたら電話頂戴ね」と、言って私は電話を切りましたが・・・。その後、彼女からは、まったく連絡はありません。彼女の場合はカウンセリングの専門家のところへ行ったほうがいいケースです。問題は、前世ではなく、まさに彼女の心の中にあるのです。そのことも改めて伝えようと思ったのですが・・・。彼女は今、どうしているのでしょうか。なんだか時々、彼女のことが心配になります。もうはるか昔の話なのに。
電話を切る前に「この話、実名を出さない条件で雑誌に書いていいよね?」と私は彼女に確認しました。その時には、すぐにでも雑誌ネタにするつもりでいたのです。しかしいつの間にかその雑誌は休刊になり、ようやく今頃になってその約束が役立つことになっているわけなのですが。
さて、知人のスピリチュアル系の女性Rによりますと・・・「うふふっ、前世ごっこで燃えるカップルってね〜、結構いるんですって!」だとか。しかし、Rちゃん、急に眉をしかめてこう付け加えました。「でも、前世からの縁かなんか言ってナンパしてくる男も多いみたい。本当に前世からの縁があるんですか?っていう質問、増えている背景には、そういうナンパ事情があるっていうのよ。前世でしてるんだから、現世でもしようよ、って言われてもねえ、それって、絶対に気をつけたほうがいいわよね。」つまり、あなたの記憶にない前世を理由に接近されたり、何かを請求されても、それは拒否したほうがいいでしょう。
私は、前世の記憶を否定するつもりはありません。前世なんてない、と言い切ることは簡単かも知れません。が、ない、と言い切ることができる確証もまた、ありませんから。しかし、とても大切なことをひとつだけ書きます。前世からの縁は、あなた自身で断ち切ることができます。現世の運命は、あなたの選択と決断によって創られます。たとえ前世の記憶があなたの中にはっきりとあるとしても、前世を断ち切る決断は、あなた自身の手によってできるはずです。
(前世があると仮定した場合ですが)、恋人や友人、家族などと前世からの縁があるかどうか、たしかに知りたいですよね。ただし、ここでこれから私が書きたいことは、前世からの縁の見分け方ではありません。前世からの縁の切り方です。
これはかなり昔の話になりますが実話です。そして、この話を公開する了解は、すでに当事者に得ています。
その日、深夜1時は過ぎていたでしょう。電話の呼び出し音が鳴り、「いったいこんな時間に・・・」と思いながらも、私は受話器をとりました。入稿前だったので、その関連の連絡かと思ったのです。
「もしもし・・・」「あ、ごめんなさい、こんな夜中に・・・」それは、顔見知りの編集者(女性)の声でした。といっても、私は彼女と一緒に仕事をしたことはありません。いったい何の用件なのか。
「あの、聞きたいことがあるの・・・」「は?なんでしょうか?」
「前世からの縁って絶対なの?」「え?・・・」
最初は、取材かと思ったのですが、でも彼女は占い雑誌の編集者ではありませんし、たしか、経済誌だったような・・・と私が考え込んでいると、彼女は急いで言葉を続けます。 「ごめんなさい、ごめんなさい、本当にごめんなさい! いきなり迷惑ですよね。」そして、泣き出しました。これは、対面鑑定をなさっている鑑定師さんたちには、そんなに珍しい光景ではないでしょう。思い詰めた末に鑑定師を訪ね、それまで抑えていた感情が溢れ出してしまい、思わず泣き出してしまう人というのは、けっこう多い、それは私もよく知っています。きっと彼女もずっと辛い思いを抱えていたのでしょう。が、これは、電話鑑定ではありません。となると・・・ここは、友人として話を聞くしかなさそうです。そう、友人として。
とはいうものの、どうやら、彼女のお悩みは前世絡みのようです。前世をみることは私にはできません。私にできるのは、退行催眠で本人の記憶を戻す手助けをすることだけですが、しかし私は、退行催眠を仕事にしてはいません。それに、実際に退行催眠をやったことがある方ならおわかりでしょうが、そんなにうまくいくものでもないのです。さてどうしたものか・・・。と私が考え込んでいると、しゃくりあげながら彼女が聞いてきました。
「ぜ・・・前世、で・・・夫婦だった、たぶん夫婦だった人と、別れるには・・・ど、どうしたらいいの?」「は?」
「前世、夫婦だった人と別れたいのっ!どうしてもっ!」そう叫んで、彼女はまた泣き出しました。
つまり、彼女、Wさんは、同棲中の恋人Sと別れたいのだそうです。が、恋人Sは、絶対に別れないと主張。それは、前世で2人が夫婦だったから、という理由。どうやったら別れられるのだろうと、毎日毎日考えているうちに、もうすべてが嫌になってしまったと彼女は言います。そして、恋人Sが眠っているうちに、思わず部屋を飛び出してきてしまったのだそうです。
「あなたはもう別れたいんでしょ?」そう聞く私に、彼女はこう言いました。
「でも、そういうわけにはいかないんです。」別れたい、でも別れられない。そういうことは多いでしょう。かつて愛した人と、まったく迷いもなく別れられるわけなどないのです。たぶん、別れたいのか、別れたくないのかさえも微妙な状態でしょう。これは、彼女自身、もうしばらく考えてから結論を出すべきです。となると、もうしばらく時間がかかるでしょう。
時計は深夜2時を回っていました。彼女が住んでいるN区まで、当時、私の住んでいた場所から、深夜であれば車で30分もかかりません。「どこにいるの?迎えに行くから、とりあえずうちに来なさい。」と言う私の言葉を、彼女は遮ります。
「そろそろ部屋に戻らなきゃ。今、近所のコンビニの電話ボックス。Sが目を覚まさないうちに戻るわ。」そう、公衆電話ボックスが、まだ街中にたくさんあった時代の話です。
とにかく、彼女が恋人Sに別れたいと言ったら、こういう言葉が返ってきたといいます。「前世から夫婦だったのに、別れられるわけはないだろう」と。
「前世で夫婦だったら、絶対に別れちゃいけないという話は、初耳だけど〜。」と私は言いました。
「え?前世で夫婦でも、別れることはできるの?」
まあつまり彼女は、「前世で夫婦だったら、現世でも絶対に夫婦にならなくてはならない。」と思い込んでいたらしいのです。がしかし、いったい、どこからそういう思い込みになってしまったのでしょうか? それからが大変でした。「本当に別れても大丈夫?」「もしも現世で結婚しなかったら、運命が狂ってしまうのよね?」「自分で縁を切ってしまったら不幸になってしまうんでしょ?」「離れようとしても、結局はやっぱり離れられないんでしょ?」「別れても、やっぱり再会することになってしまうんだから、だったら、我慢して一緒にいたほうがいいんじゃない?」
恋人Sにそう繰り返し繰り返し言われ続けているうちに、彼女はそれを心の底から信じ込んでしまったらしいのです。彼女は高学歴の女性です。その頃彼女が在籍していた出版社は、名前を出せば誰でもが知っている、経済系の超有名雑誌。迷信などに囚われるのは恥ずかしい、占いも信じてはいない、と彼女はいいます。まあ、信じるか信じないかは彼女の自由ですが。
とにかく、激務をこなして家に帰れば、そこには「前世、夫婦だった俺を捨てるのか・・・?!」「前世の約束を反故にするのか?」「前世を忘れたとは言わせないぞ。思い出せ。」と恨みがましく言い続ける恋人。これはもう、前世(リインカーネーション)ハラスメントとでもいったほうがよさそうです。そして同時に、究極の腐れ縁でしょう。
「ということは、あなたにはその前世の記憶はあるわけよね?」と私は彼女に念のために聞いてみました。「いいえ、私にはないけれど、Sにはあるって。」
「あなたが覚えていないんだから、あるかどうか、わからないんじゃないの?」と私が言うと、「じゃあ、前世ってないの?でたらめなの?」「忘れたから知らないって言えば、それで縁が切れるというわけじゃないでしょう?」と、まくしたてる彼女。あれ?Wさん、いつのまにか、Sと同じこと言ってませんか? つまりのところ、彼女は、前世(かも知れない手がかり)を手放したくないのです。だからSと別れられない・・・。これははっきりと彼女自身の問題です。
延々と彼女の長電話は続き、深夜3時を過ぎた頃に、疲れてきた私は言いました。「あのね、とりあえず、家に帰ったら?明日、仕事でしょ?」
すると彼女はこう言いました。「決めた。もう帰らない!これからタクシーに乗って、東京駅まで行って、始発を待ちます。それから飛行機で実家に帰ります。」と。職場には、親の具合が悪いと説明して、臨時休暇をとる、と言います。たしかに、このまま日常に戻らないほうがいいかも知れない、と私も思いました。「じゃあ、実家に着いたら電話頂戴ね」と、言って私は電話を切りましたが・・・。その後、彼女からは、まったく連絡はありません。彼女の場合はカウンセリングの専門家のところへ行ったほうがいいケースです。問題は、前世ではなく、まさに彼女の心の中にあるのです。そのことも改めて伝えようと思ったのですが・・・。彼女は今、どうしているのでしょうか。なんだか時々、彼女のことが心配になります。もうはるか昔の話なのに。
電話を切る前に「この話、実名を出さない条件で雑誌に書いていいよね?」と私は彼女に確認しました。その時には、すぐにでも雑誌ネタにするつもりでいたのです。しかしいつの間にかその雑誌は休刊になり、ようやく今頃になってその約束が役立つことになっているわけなのですが。
さて、知人のスピリチュアル系の女性Rによりますと・・・「うふふっ、前世ごっこで燃えるカップルってね〜、結構いるんですって!」だとか。しかし、Rちゃん、急に眉をしかめてこう付け加えました。「でも、前世からの縁かなんか言ってナンパしてくる男も多いみたい。本当に前世からの縁があるんですか?っていう質問、増えている背景には、そういうナンパ事情があるっていうのよ。前世でしてるんだから、現世でもしようよ、って言われてもねえ、それって、絶対に気をつけたほうがいいわよね。」つまり、あなたの記憶にない前世を理由に接近されたり、何かを請求されても、それは拒否したほうがいいでしょう。
私は、前世の記憶を否定するつもりはありません。前世なんてない、と言い切ることは簡単かも知れません。が、ない、と言い切ることができる確証もまた、ありませんから。しかし、とても大切なことをひとつだけ書きます。前世からの縁は、あなた自身で断ち切ることができます。現世の運命は、あなたの選択と決断によって創られます。たとえ前世の記憶があなたの中にはっきりとあるとしても、前世を断ち切る決断は、あなた自身の手によってできるはずです。
占術研究家 秋月さやか
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