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占術解説

どうやったら前世を知ることができますか?

 「私の前世は、いつどこのどんな人物だったのでしょうか?」というような問いには、私は一切お答えできません。なぜなら、答えることができないのです。かつて、リリト占星術のファンだというお嬢さんから「私の前世を観てください」と言われ、「私にはわかりません。」とお答えしたら、その方はがっかりした顔をして、黙り込んでしまいました。その一方で、反対のケースもありました。「リリトの本を読んで、なぜ今まで自分が不本意ながらこのように生きてきたのかがわかった、いつも繰り返し見る夢は前世夢で、ようやくそれに気がつき、しかもそれが事実であったことを確認することができた」というお便りには、私のほうがびっくりしました。
 ですが、仮に、前世があるとしても、その記憶を辿ることが出来るのは、あなた自身だけなのです。他の人に、そんなことがわかると思いますか?前世とは、その人の心の中にだけ存在している記憶。前世への興味とは、自分自身の心の深遠を見つめ、もうひとりの自分を探したいという意識でもあるのです。そう、これは自分自身のためだけの、前世探しというレッスンなのです。

 神秘学の考え方では、魂は不滅で、輪廻転生しながら幾度もこの世に生まれ変わるとされます。ある精神科医は、患者の精神的な疾患の原因が、過去世で傷つけられた記憶にあるのではないか、と考えました。つまり、過去世での記憶が無意識の中に潜んでいて、現世での行動や考え方にまで影響を与えるという仮説をたてたのです。いつもなぜか同じパターンでつまづく、いつも同じタイプの相手に縁がある、こうした宿命的ともいえる出来事には、潜在意識に隠された記憶が影響しているのだ、と。では、前世があると仮定した場合、その前世の記憶とはいったいどういったものなのでしょうか? それは、誰しも興味のあるところでしょう。(前世なんてない、とはっきりといいきれる人は別として。)
 前世の記憶を解き明かす場合、ほとんどは退行催眠という方法を用います。これは、時代の記憶を遡っていき、生まれる前にまでさらに遡っていくという手法です。私も挑戦しましたが…、私の場合、遡れるのはせいぜいが2歳半ぐらいまで、とても前世まではたどり着けなかったわけです。立ち会い人(退行催眠をする人)は、「一種のプロテクトのようなものがかかっている」と言うのですが…。
 といっても、もしも前世の記憶のようなものが浮かんできたとしても、それは、必ずしも前世の記憶であるとは限らないでしょう。遺伝子の記憶という可能性もあります。つまり、遺伝子にプリントされている祖先の記憶が浮かんできた可能性もあるわけです。

 また、その前世物語は、これまでの人生で選択されなかった可能性を繋ぎ合せ、心の中で生み出された架空の物語の可能性もあります。現実世界を生きていくには、無数の選択がつきまといます。たくさんの可能性の中から、あるひとつの可能性を選択した時点で、現実の影には、選択できなかったたくさんの可能性が常に存在します。(本当はあの人と結婚したほうがよかったのかも。この仕事を選ばなければよかったんじゃないかしら…。あの時、別な選択をしていたら、もっと別な人生を歩んでいたかも知れない。)そういう未成就の願望はトラウマといってもいいでしょう。トラウマは心の傷と称されますが、選択できなかった悔恨もまた、トラウマの要因になりうるのです。そのトラウマが未成就願望をつなぎ合わせたものが、もしかしたらこういう人生もあったのだろうか、という前世物語になっているのだとしたら…。
 それはある意味、夢の中で起こる出来事のようなものでしょう。夢もまた、未成就の願望がつなぎ合わされて出来上がった物語だからです。ですが、夢は常に未来の出来事を描いているわけではなく、過去に引き戻す役割もします。時を越えた過去夢、それが、生まれる前の世にまで遡ったものが前世夢と考えられるのですが、それとて、遺伝子の記憶の再現、つまり、あなたの祖先の誰かが体験した記憶の再現という可能性も考えられるわけです。

 とまあ、前世への好奇心から、私は、それを探る手がかりを、占星術の中に探し始めました。まだ10代の頃です。そして、海外文献でダークムーンリリトを知ったのが20代に入ってすぐの頃でした。
 ダークムーンリリトとは、古代から占星術師たちの間で言い伝えられた闇の月。つまりは蝕に関連する架空の闇の軌跡によって導き出される感受点です。
 リリト(リリス)は古代ヘブライの文献(旧約聖書の異伝)でアダムの最初の妻と言い伝えられます。アダムを作ったのは神で、リリトを作ったのは悪魔であると。2人は夫婦になるはずでしたが、リリトはアダムに従うことを拒否します。(一説には、初夜の晩に男性上位の体位を嫌って)、アダムの元を去り、夜の闇の中へと逃れ、冥界の女王になります。そこで神はアダムのために次にイブを創って与えます。イブはアダムの肋骨から創られただけあって従順でした。イブに嫉妬したリリトは蛇をつかわして林檎(一説にはいちじく)を食べさせ、2人がエデンの園を追放されるきっかけを作ったといいます。
 中世に入ると、リリトは淫乱で心を支配する夢魔(スキュブス)として恐れられるようになっていきます。下半身蛇、上半身美女の姿で描かれるリリトこそ、闇に潜み、無意識を司る太母神の姿。
 ケプラーはその著書の中で、日蝕の影の中を通って闇の魔神たちが地球へ降りてくると記していますが、月の影を通って降りてくる魔神とはすなわちリリトの娘たち、夢魔。
 神の「光あれ」という言葉によって、この世界に光がもたらされたと伝承は語っていますが、実はその時に闇も共に生まれました。たぶん、闇のほうが先にあったので、闇の中から光が生まれたという解釈もできます。が、闇は光がなければその存在を認識されないものなので、正しくは、光が生じたとたんに、闇も同時に生まれたと考えるべきです。そう、光と闇は本来、一体のものであったはずです。太陽、月、そして星々など光輝くものは神の化身。日蝕、月蝕などでその光が隠された時、人々はそれを隠す影を魔と称しました。魔とは、抑圧された意識、潜在意識の中に人々が押し込めている願望なのですが、しかしながら、それは光があるからなのです。

 占星術では、月は人間の感情の象徴とされますが、目に見えない闇の月リリト(リリス)は、その意識の奥に隠されたもの、潜在意識の領域を象徴します。だからこそ、この闇の月ダークムーンに、リリス(リリト)という名称が与えられたわけです。であれば、前世の意識はリリト(リリス)の支配下にあるはず。私(秋月さやか)は、この伝統的な考え方に従い、前世記憶を解き明かす手がかりとしてリリト(リリス)を用いることにしました。つまり、前世も含めた潜在記憶は、すべてダークムーンリリトの支配下にあるのです。

秋月さやか

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